今年も残るは2日 さて今日はお墓の文字彫刻のことを話そうかな。

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おはようございます。今年も残り2日になりましたね。石屋のけんすけこと清水健介です。

まぁ酉の市が終わってからも毎年継続して行っている軽トラでのカレンダー配りや忘年会やら仕事に大掃除とまさに師走という忙しさです。

また最近では職人の身内に不幸がありました。亡くなったおじい様は100歳。香典返しに紅白の“のし”がついており、鰹節が送られてきました。天寿を全うしたということなのでしょう。大往生です。死してなお人の記憶に残るというものは凄い事だとあらためて思う出来事でした。

さてさてそんな年末なのですが今年最終の墓所完成の引き渡しを先日おこなってきました。大切な旦那様を亡くしての年越しになります。お施主さんも同様に師走の忙しさで悲しみを少しでも忘れることができているのでしょうか。僕らにできることはお墓をきっちり完成させ、埋葬をしっかりと務めあげることです。悲しみはすぐには癒えることはないと思うのですが、手を合わせる場所があることで故人との対話の中で少しずつ心にできた空洞を埋めていっていただけることを望んでいます。

お墓の文字彫刻の仕方について

石への彫刻は不変です。経年劣化というものはありますけど、木造などに比べると格段に耐久力があります。古代ローマやギリシア建築では今でも残っていて文字を読み取ることができます。後世へ遺すために耐久性のあるものへの彫刻が必要不可欠だったのでしょう。石へ文字を彫刻をするということは人間の欲求?に近いのかな。紀元前からやってきたことですからね。自己表現の最たる例なのではないでしょうか。

僕もお墓を建てるという仕事をしていることから文字彫刻へのこだわりは強いほうです。…自分の書く文字はへたくそなのですがね…。

皆さんが書道家さんと聞いて一般的なイメージだと武田双雲さんなどを思い浮かべられる方が多いと思いますが、うちらの中での書家さんはお墓の文字専門の人。

半紙の中で作品として書いているものと石への彫刻をした場合の感じとは全然違う印象になってしまうのがお墓の文字彫刻に関して最も難しいところだと僕は思っています。あとは安心とか安定している文字を書く方と知り合うことが重要かな。

文字=人間=その人の個性

です。彫刻文字を書いていただくと、その人の個性が文字にバンバンでます。それがお施主さんの感性にフィットするか否かというのは非常に難しいことで最も僕が気を使っているところでもあります。

人は石も当然見ているだろうけど、文字はまず読むよね。ヘニャヘニャな文字だと…ね…。法事の時などは参列者の方々が品評会しているような状態もあるしね。

彫刻技法のひとつ さらい

そんな文字彫刻ですが彫刻技法にも色々あります。まずはこの写真をみていただければ

はい 『 家 』って文字ですね。これをズームアップしていきますと…。

文字の中に細かい線

細かい線の彫刻がわかりますでしょうか?無数の線が字の中に彫ってあります。これを

さらい

といいます。文字彫刻に関しても地域色がありまして、関東地方で多くやる技法です。

1つ1つの文字の中を職人が手作業で彫っていくわけです。

これは習字での毛筆の線を表しているんです。

ちなみにこれが普通に彫った場合

家の中は彫っただけになっている

どちらがより良いというわけではないのですが、お施主さんのご希望に合わせてこのような“さらい”加工をしているわけです。ちょっと感覚的な言い回しですが文字に“厚み”や“あじわい”を持たせることが主な理由です。

家紋にもこのようなさらいを施すこともあります。

これが普通に彫った場合。

家紋は丸に横木瓜

これはこれで綺麗なわけですが、こちらをご覧ください。

家紋周辺を無数の点で彫刻している

はい これが“さらい”をした家紋となります。さてさて、あなたはどちらが好みでしょうか?

特殊彫刻 門外不出のみかん彫り

先ほど地域によって彫り方が異なるということをお話しましたが、これは日本で採れる石の種類によるものだと思うわけです。東日本と西日本とで産出される石をザックリとわけますと東日本=黒系統・白系統混合 西日本=白系統と分けられます。西日本では黒系統の石でお墓を作ることはあまりないと思います。“さらい”は黒系統の石だと映えるのですが、白系統の石では加工してもあまり見えないのです。

ではどういう方法があるのか。

字彫り彫刻の作業風景

よくコンピューターでパパッ!!と今は技術が進んでいるから彫れるっしょ??と言われることがありますが…道具はノミからサンドブラストへ変わったといえども職人によって1つ1つが彫られております。

糸へんを彫っているところ

人が彫っているので深く彫る、浅く彫るなどの強弱が生まれます。それによって習字の力加減を表現するわけです。

赤く光っているところが彫れている場所です

香川県の一部地域に脈々と伝わる技術 みかん彫り

白系統の石というのは磨いた時の色と切削面での陰影の差がつきにくいんです。なので文字が見えづらい…。

でもこちらはどうでしょうか?

もうはっきりと見えるわけです。

なぜか。

通常の字彫りは垂直に彫っていくのですが、彫った側面も丸く彫っていくわけです。なので“みかん”という呼称がついているのでしょう。

ほら指を入れてみると

側面が掴めるんです!

これはすごいこと!!

じゃあ関東でもやれば?という風になるのですが…門外不出の伝統技法をできる職人がいないのです…。なのでうちでは香川産の石もしくは関西系の石で墓石を作った時にしかできない技法になるのです。

おまけ

日蓮宗系ではお題目というものを彫ります。南無妙法蓮華経というものを彫ります。住職さんによって個性が際立つものです。もはや1つの作品と言ってもいいくらいなわけです。ちなみにこの石塔は前述のみかん彫りではないのですが、彫る深さの強弱によって字を浮き立たせています。

日蓮宗系ではヒゲ文字というものもあります。ピョンピョンあえてはねさせるように書きます。どこかで見た記憶がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?宗旨によって文字が違うのもまた面白いところですね。今一度お正月などにご自分のお墓へお参りに行かれる時に彫刻されている文字に注目してみるのもいいと思います。

いよいよ明日は大みそかです。年越しの準備は皆さんできていますでしょうか?僕は…まだちょっとかかるかな…。それではまた!

この記事を書いた人

清水 健介
清水 健介この記事を書いた人
創業明治10年東京都上板橋の石材店清水屋5代目社長の清水健介です。令和元年に5代目就任。学生時代からやってきた納骨回数は2000回を超える。お墓、石のことなら何なりとご相談をいただければと思います!お墓を作ったはいいけど、コケだらけなんか嫌!“また会いに行きたくなるお墓つくり”を提案しています。髪がくるくるしているけどパーマじゃない。これは無料パーマだといいつづけている。全国石製品協同組合 理事、東京都石材業政治連盟 幹事長。
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